060-017 高性能プラグの中心電極はなぜ細いの?
 前から疑問に思っていたのですが、なぜプラチナプラグとかイリジウムプラグなどの中心電極は、普通のプラグに比べて細いのでしょうか?
 これは電気の性質を多少なりとも知っている人にとっては、素朴どころか理解できない疑問になるのは間違いありません。
 というのは、電気を流しやすくするには、電気が流れる経路(電線など)を太くしておいたほうが流れやすいからです。
 例えれば、片側1車線の道路より2車線の道路のほうが、車の流れがスムーズなのと同じと考えてもらえれば良いのです。
 特に、流れをスムーズにして、性能を上げようと考えている高性能プラグであれば、なおさら3車線とか4車線になるように、電気の流れる中心電極を太くするほうが都合が良いというのは、電気の知識がある人にとっては当然のことなのです。

{まずは、ホントに中心電極が太いほうがいいのか?}
 もちろん電気的には、細いより太いほうが良いのは間違いありません。
 ただし、先ほどの例でも1車線より2車線のほうが都合がいいのは間違いないのですが、夜中の交通量が少ないときにホントに2車線必要かどうかは別の話になることがあります。
 それと同じように、電極の太さに比べて、流れる電流の値はさほど大きくなければ、わざわざ太い電極にしなくても問題が無いということになります。
 プラグに流れる電気というのは、電圧は新幹線並に2〜3万ボルトという高電圧ですが、電圧が高いために、実際に流れる電流は意外と小さいのです。
 電気における電流というのは交通量と同じで、電圧は1台あたりの定員だと考えてもらえれば良いのです。
 例えば2人乗りの車1000台を1時間の間に通過させれば、通過した人は2000人になります。(このときに交通量1000台が電流量と同じです)
 ところが5人乗りの車で400台流せば、クルマの通過量は40%になっているのに、通過した人は同じ2000人なのです。
 昔はともかく、現在ではこの電圧(定員が増加したクルマ)が高くなっているために、同じエネルギーを放電させるには、少ない電流量で済むようになったのです。
 もちろん、放電するエネルギーは、エンジンの高性能化に伴って大きくなっていますが、それでも巨大な電流を流す必要が無いのです。
 したがって、中心電極を太くする必要はあまりないと考えていいのです。
 
{それでは電極が細いほうがいいのか}
{その1のお話}
 太い必要があまりないというと、じゃ細くても良いかと考えるのは、私の発想が極端なのかも知れませんが、細い場合にメリットがあるかどうか考えてみましょう。
 電流が少なくなればなるほど、スパークする表面積(電極の太さと考えてください)が大きいほど、エネルギーはバラバラに拡散してしまいがちになります。
 ガソリンとの混合ガスに引火させやすくするには、強い火花である必要があるのですが、電極のアチコチでチロチロと火花が散ると、最悪の場合引火できない可能性が出てきます。
 それで、先ほどの交通渋滞を引き起こさない程度に電極を細くすれば、そこに集中的に電気エネルギーが流れることになるので、着火性が向上するのです。
 したがって、電流が流れる上で支障の無いような細さであれば、むしろ性能が向上することになるのです。(もちろん材質により抵抗値なども違いますから、使用する材料での許される限度というのがあります)

{その2のお話}
 実はそれだけではないのです。(モチロンこういうことがあるから、ここに書くのですが・・・)
 電極は金属で作られています。(当たり前ですね)
 また、モノが燃えるというのは、その物質?の温度が、いろいろなエネルギーによって発火点を越えるから発火するのです。
 この原則は、もちろんエンジン内においても生きた理論なのです。
 特にエンジン燃焼室やプラグの電極付近の温度が低い、エンジン冷間時やアイドリング付近では、この中心電極の温度も低いのです。
 すると、そこからの放電によってせっかく混合ガスに点火しようと思っても、中心電極が冷えていると燃焼しにくかったり、シッカリと燃焼エネルギーが広がっていかなくなります。
 それは、火を消すには、酸素を絶つか、温度を下げるかどちらかの方法が効果的なのと同じで、周辺の温度(中心電極温度)が低いと、引火して上昇した熱エネルギーが、その金属部分に吸収されて、せっかくの引火した混合ガスがうまく周辺に広がりにくくなるのです。
 カンタンに言えば、冷えた大きな金属のかたまりで、炎を消してしまうということで、これを消炎効果というのです。
 これを防ぐためには、冷えている金属のカタマリを小さくすれば良いことで、これまた中心電極を細くすることで解決します。

{では、なぜ今まで太かったのか?}
 ここまで説明すれば、なぜ今まで太かったのか、そして現在でもノーマルなプラグは太いのか理解に苦しむことになります。
 実は結構カンタンなことで、ノーマルプラグに使われている材質はニッケル合金なのですが、これを細くすると磨耗が激しくて、とても1万キロとかいう寿命にはならないからというのが1番の理由なのです。
 それに比べて、プラチナとかイリジウムなどは耐摩耗性に優れていて、細くしても磨耗しにくいために、ここまでに説明した効果を発揮することができるようになったわけです。
 参考までに中心電極の太さを比較してみればわかりますが、ノーマル1〜1.1ミリ、プラチナ0.6ミリ、イリジウム0.4ミリというのが当ショップでも扱っているNGKでの一般的な数値です。
 ここで、もう一つ参考までに、イリジウムプラグを装着された、わりと多くの方からフィーリングの向上、燃費の改善などが寄せられましたので、走行距離が多い方、何度も始動される方などには、オススメかもしれません。

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