030-009 スピーカーは2ウェイより3ウェイのほうがいいの? 2007.2.4修正
 当ショップの商品リストに限らず、オーディオメーカーのカタログを眺めていると、こういう疑問が沸いてくるのは当然ですよね。
 何でも数が多いほうがスゴイのではないか?という感覚から言えば、3ウェイスピーカーより高価格な2ウェイスピーカーは結構あるのです。
 メーカーによっては、9,500円の3ウェイスピーカーがあるかと思うと、30,000円を超える2ウェイスピーカーがあったりするのです。
 その違いは、素材や製造工程などの手間のかかり具合の違いなのですが、ヘンな例えをするならば、野球の場合ヘタな選手が3人で外野を守るよりは、上手なプロ選手が2人で守るほうが結果としてよい守備ができたりする可能性があるのと似ています。
 まあ、この表現は適当ではないのですが、今はほとんど見られなくなった9人制バレーチームを素人で編成して、プロの6人制チームと対戦させると、間違いなく6人制のプロチームの勝ちになるでしょう。

 それと同じではありませんが、なぜマルチウェイ化(フルレンジ⇒2ウェイ⇒3ウェイ)するのかというところをまず考えないといけません。

{1ウェイ理想論}
 本来、一番の理想はフルレンジスピーカーといわれる1ウェイスピーカーでキレイな音が出せるのが理想なのです。
 しかし、低音再生のためにスピーカーに要求される条件と高音に要求される条件は、ほとんどの場合相反する条件なのです。
 低音を再生するには、スピーカーのコーン部分の剛性が要求され、そして大電力が流れても大丈夫なようにコイルも太目の電線で構成され、それなりの重量も増加するのです。
 しかし、高音を再生するには、軽いことが絶対条件になり、口径を大きくしたり剛性改善のために重量が増加している低音用のスピーカーに要求されている条件とは、全く違ってしまういます。
 それを妥協するために、全ての周波数で中途半端なサイズ、剛性、重量、耐入力などで作らざるを得なかったというのが、昔の常識だったのです。
  したがって、安い素材でそれなりの性能を発揮させるために分業化という目的でマルチウェイ化が進んでいるのです。
 特にマルチスピーカー製造技術にお金がかからなくなった最近では、その傾向が顕著になっています。
 しかし、マルチスピーカーはある程度のレベルまでは安く作れる便利な手段なのですが、高品質を要求すると基本的に無理が生じてしまうのです。

{セパレートマルチスピーカーのよさ}
 それは低音用のスピーカー(ウーファー)の同軸上に高音用のスピーカー(ツィーター)を装着する以上、その2つのスピーカーが出す音が干渉して、よい音にならなかったり、十分な音圧(空気を振動させて耳に到達する波動の強さ)が得られなかったりするのです。
 それを改善するために、ツイーターなどをウーファーの上に設置しないタイプのスピーカーが登場したのです。
 これによって、守備範囲を狭めた低音・高音それぞれの1ウェイスピーカーに似た性能が発揮できるようになったのです。

{ではセパレートマルチスピーカーなら良いのか}
 ここまで書けば、究極のスピーカーはセパレートタイプのマルチスピーカーではないかと思えてきます。
 それはある意味正しいのですが、スピーカーの手前でそれぞれの周波数成分が流れ込むように振り分けている部品にも着目しなければいけません。 
 この部品をネットワークと呼び、その部品のセッティングで、どこからどこまでの周波数がどのスピーカーに流れ込むようにするかを決めるのですが、これをカンタンにコイルとコンデンサーだけで作っているものがほとんどです。
 2〜3ウェイのセパレートマルチスピーカーで、さらに高価格なスピーカーは、そのネットワークのセッティングを何段階かに変更でき、高音などの強さまで加減できるものもあります。
 したがって、こういう商品のほうがクルマの状況に合わせたセッティングがおこなえるために、より良い音をセットアップすることができます。

{究極の必要悪?マルチシステム}
 これでベストかと思いきや、実はさらに問題があるのです。
 先ほど書いたように、耳で音楽が楽しめるのは、音がスピーカーの振動によって波動として伝わるからなのですが、波である以上プラス成分とマイナス成分があり、その組合せ次第では、せっかくそれぞれのスピーカーから出てきた音波を打ち消したり、奇妙な盛り上げ方をすることがあるのです。
 したがって、リスニングポジションにキレイに到達させるために逆算して、到着した音波が理想的になるようにしなければいけません。
 それを位相の調整と呼び、位相を逆にすることによって自然な音に仕上げるとが可能になるのです。
 しかしこれをおこなうには、これまでのスピーカーでは困難です。
 ここで、お聞きになった方も多いかもしれませんが、マルチシステムと言って、それぞれの周波数用のアンプとスピーカーを用意して、そこに最適な位相や出力を供給してやるシステムが意味を持ってくるのです。
 ただし70点まではうまく準備してあるような、これまでのスピーカーと違い、全てのスピーカーやアンプの選択、クルマによって異なる音場特性などを十分理解して、それにあったセッティングをおこなわなければ、100点どころか30点にもならないようなセッティングになって、結局はお金がムダになったということにもなりかねません。
 このシステムについては、お話しなければいけない情報量が実に膨大なために、全てを一度にお話することはできませんが、少しづつご紹介したいと思います。
 したがって、ワンウェイスピーカーの集合体という意味で、潜在能力絶大なマルチシステムですが、それを活かすも殺すもセッティングする人やお店のウデ次第なのです。
 特に音響理論や一般電気知識、その他の勉強をされていなければ、仮に音場測定アナライザーがあっても、十分活用できないのです。


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